調査報告:国立台湾大学(NTU)
調査実施日時
2025年3月20日
調査先情報
名称:国立台湾大学 National Taiwan University臺大創新設計學院 D-School
住所:NTU Shuiyuan Campus, Building for Research Excellence, 4th Floor, Room 404, No. 18, Siyuan Street, Zhongzheng District, Taipei City 100
ホームページ:https://dschool.ntu.edu.tw/abouten_dschool/
調査参加者
大石尚子(龍谷大学)、井上良子(龍谷大学RA)
概要
国立台湾大学(NTU)は台湾で最も権威があるとされる最難関の総合大学。2015年に革新的で学際的な新しい学部としてCollege of Design and Innovation (D-School)を新設し、未来を切り拓くリーダーとなるための教育を提供しています。
D-School設立経緯と特徴
・2018年:2008年に創設されたCreativity and Entrepreneurship Programと運営を統合
・2021年:教育・研究の両ミッションを包含するミッション主導型の大学へ移行するとともにTrans-disciplinary Bachelor Degree (TBD) Programを創設
国立台湾大学、国立台湾師範大学、国立台湾科学技術大学の3つの大学(カレッジ)を横断するカリキュラムは、デザイン、教育、サイエンス&テクノロジーという各大学の強みを活かして構成されています。学生は、所属する各大学において学部の単位を取得することに加えて、TBDプログラムを受講する建て付けになっているのが特徴です。TBDプログラムには、毎年60名ほどの学生が参加しているそうです。

TBDプログラムは、①マインドセット ②スキル ③課題解決 ④国際的・企業プロジェクトという4つのテーマ構成のもと、①Issue-oriented : 課題志向 ②Trans-disciplinary : 学際的 ③Practical : 実践的(リアルな課題と向き合うこと)という特徴をもっています。
プログラムの具体的な内容
TBDプログラムの具体的な内容は下記の通り
*問題解決型学習-Problem Based Learning(PBL)で学部間の教員と学生をつなぐ
*学際的な学習環境の中で、学生は主体的な学習能力を身につけ、急速に変化する社会や複雑な問題に迅速に対処できるようになる
*学生は自分だけの革新的なテーマを選び、それを核にして各自のコース計画を立てる
*学習プロセス|ケーススタディ、テーマ設定、マーケットリサーチ等、プロトタイプ+検証、→デモデー(ピッチ)
・プログラム後も大学のインキュベーション施設を使え、ファンドレイジングの支援もある
・社会起業家の講演、メンター制度、フィールドワークやBoot Camp(夏休み期間)も充実

視察を終えて
デザイン思考、ソーシャルデザイン、Interaction Design、Information Design and Visual Narrative等のユーザーの視点に立ち、共感を出発点として複雑な問題を解決するための最新のアプローチをベースにしながらも、具体的に学生たちが取り組んでいるテーマとしては地域固有の課題(漁業、教育格差、移民の食文化など)が多いのが印象的でした。
また、テクノロジーを活用した課題解決のアイデアも多いそうで、複数の大学が連携したプログラムである点も含めて複数のリソースを掛け合わせる取り組みだと言えます。